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職場における熱中症対策の義務化
近年の夏は、地球温暖化の影響によりかつてないほどの厳しい暑さが当たり前になりつつあります。特に猛暑の時期には「熱中症」の発生件数が急増しており、労働現場においては深刻な問題となっています。こうした状況を受けて、厚生労働省は6月1日より企業に対して罰則付きで熱中症対策を義務付ける方針を固めました。
今月は、「熱中症対策義務化(労働安全衛生規則改正)」の具体的な内容と、実施可能な暑さ対策について解説します。
なぜ対策義務化?
熱中症対策が義務化される最大の目的は「熱中症の重篤化防止」です。近年、熱中症による死亡災害は年間30万人を超え、労働災害による死亡者数全体の約4%を占めていることを受け、熱中症対策の強化が急務とされています。労働安全衛生法では、「高温などによる健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない」とされており、「労働者に与えるために塩及び飲料水を備えること」などが義務付けられています。しかし、現行法令上では熱中症による死亡災害の原因とされている「初期症状の放置、対応の遅れ」に対して明確な規定がないことが問題視され、再検討されることとなりました。
企業に求められる対策
熱中症対策の基本的な考え方は、見つける、判断する、対処する、です。そのためにも、企業においては「①報告体制の整備」「②実施手順の作成」「③関係者(労働者)に周知」が義務付けられます。
①報告体制の整備
熱中症の症状のある労働者を積極的に把握できるよう、職場巡視やバディ制度の採用、双方向での定期連絡などの措置が推奨される
②実施手順の作成
迅速かつ的確な判断が可能となるよう、作業離脱、身体冷却、医療機関への搬送など、重篤化予防に必要な措置の実施手順を作成しておく
③関係者に周知
整備した報告体制や実施手順は、関係者全員に周知する必要がある
朝礼やミーティングでの周知、分かりやすい場所への掲示、メールやイントラネットでの通知などを通して、社内で共通認識を持てるようにする
熱中症警戒アラート
熱中症警戒アラートは、危険な暑さが予想される場合に、暑さへの「気づき」を促し熱中症への警戒を呼びかけるものです。熱中症の危険性が極めて高くなると予想される日の前日または当日早朝に発表されます。熱中症に関する情報は、ニュースや天気予報等で確認しましょう。
熱中症警戒アラートが発表された際には、エアコンの使用や水分・塩分を補給するといった予防行動が重要です。一人ひとりが徹底するとともに、家族や周囲の人々による見守り・声かけ等の協力も大切です。特に子供や高齢者は暑さに鈍感だったり、自分では行動できないこともあるので注意が必要です。
水分だけでは不十分!熱中症対策にはたんぱく質を
ニュースでは「熱中症対策には、こまめな水分補給を」と言われますが、私はしっかり飲んでいるから大丈夫!と思っていませんか?実は熱中症予防には、お水を飲むだけでは万全とは言えないのです。それは「たんぱく質」が関係しています。夏場になると食欲も衰えて充分摂れていない・・・なんてこともあるかと思います。こちらでは、熱中症対策として「たんぱく質」の効果について、ご紹介します。
水を貯えやすい体をつくる
私たちの体内の水分は、約半分が筋肉に貯蔵されます。実際に筋肉量が多い人は熱中症になりにくい傾向があります。貯水しやすい体づくりのためには、筋肉が必要です。たんぱく質は筋肉量を増やすのに最適な栄養素です。また、たんぱく質を構成するアミノ酸のロイシンは、筋肉の合成を促す効果が高いので、ロイシンを含む肉や魚を積極的に食べましょう。たんぱく質は体内や血管内に水分を取り込み、維持することにも役立つ栄養素です。たんぱく質を摂りながら、体を動かし、長期的に筋肉が維持できるようにしましょう。
汗で失われるものは食事で補給する
夏になる前には、体内の貯水量を増やすためにたんぱく質を多めに摂ることが大切ですが、暑い時期になったら摂り過ぎには注意が必要です。たんぱく質は体温を上げる作用があるので、暑くなってきてからの対策として必要なのは、汗をかくことで失われた体内の水分や栄養分を補うことです。熱中症にならないためには体内の水分を保つことが大切なので、汗によって失われてしまう水や電解質(マグネシウム、カリウム、ナトリウム)、ビタミン類などを補う食事が必要になります。
院長メッセージ
今年も熱中症の季節が到来しました。6月でありながら「熱中症アラート」が発令される日もあり、今年の夏は例年以上に猛暑予報が出ています。
令和7年6月1日より職場での熱中症対策が義務化されました。「攻める熱中症対策」として、日中のこまめな水分補給は大切ですが、就寝前のコップ1杯のお水、たんぱく質、夏野菜(キュウリ、トマト、スイカなど)の積極的な摂取を心がけ、体の中からクールダウンを目指していきましょう。また、この時期の睡眠は特に重要です。熱中症の多くの方が睡眠不足から発症しています。空調を上手に使いながら、良い睡眠をとり、暑い夏を乗り切っていきましょう。
記事監修
せんだい総合健診クリニック院長 石垣 洋子
1981年 聖マリアンナ医科大学 医学部卒業
1981年 同大腫瘍学教室
1986年 財団法人宮城県労働衛生医学協会
2003年 医療法人社団進興会エスエスサーティクリニック
2004年 ソフィア健診クリニック院長
2010年 せんだい総合健診クリニック院長 現在に至る